歯の知識 ①メインテナンス(予防)

歯の治療は長持ちしない?

治療を受ければむし歯が治ると思っていませんか?「歯の知識:むし歯治療」でも紹介していますが、日本におけるむし歯治療の成功率のデータを見ると、厳しい現実が見えてきます。詰め物や被せもの、ブリッジなどの10年成功率が31.9~67.5%という報告があり、治療を繰り返しながら歯を失っていくことがわかります。

参考文献:青山ら,口腔衛生会誌 J Dent Hlth 58: 16-24, 2008から引用

このデータはあくまで数ある報告のひとつなので、すべての歯科医院に当てはまるわけではありませんが、一般的に行われている日本の歯科治療の成績は患者の皆様が想像している成功率よりも低いようです。


当院の経験でも、治療のほとんどが過去の治療のやり直しで、痛みも穴も空いていない症状の無い歯でさえ、銀歯を外すとむし歯だらけということをよく経験します。


時間とコストをかければ、治療の成功率を100%に近づけることは可能ですが、人生100年時代、20歳で治療をした場合10年どころか場合によっては80年も歯を使わなければなりません。

治療しないことを目指そう!

最も良い方法は何でしょう?私たちは「治療せずに済むこと」だと考えています。治療する必要がなければ、成功率もコストも気にする必要がありません。治療しない以上に良い方法はありません。


幸いにもむし歯も歯周病も予防できる病気です。私たちはむし歯予防と歯周病予防のことをメインテナンスと呼んでいます。

メインテナンスで歯を守る

メインテナンスを受けている方とそうでない方で、歯を失う確率が変わることは数多くの研究報告から明らかになっています。例えば、日本で行われた研究のひとつを見てみますと、メインテナンスの有無で歯の喪失率が約2倍違う結果になっています。

参考文献:河本幸子ら,口腔衛生学会雑誌48,685〜690(1998)より引用

日本の報告に限定せず、より精度の高い研究結果をみると、3倍以上の差になっているものもあります。

むし歯と歯周病は予防できる

また、一般的に歯を失う原因のほとんどはむし歯と歯周病ですが、質の高いメインテナンスを行っている診療室では、むし歯と歯周病で歯を失う割合が少ないことがわかっています。


下の図は30年にもおよぶ質の高いメインテナンスを行った研究報告からのデータで、メインテナンスをしている場合、むし歯と歯周病で歯を失う確率が非常に低いことわかります。

参考文献:P Axelsson et al, J Clin Periodontol, 31 (9), 749-57 Sep 2004. より引用改変

当院の経験からも、メインテナンスに通われている方はむし歯と歯周病で歯を失うことはほとんどありません。

メインテナンスで何をするの?

メインテナンスでは、むし歯と歯周病のリスク評価を行い、リスクがあれば根本的な対策を立てていきます。


例えば歯周病については、歯周ポケットの深さと検査時の歯ぐきからの出血の有無が重要になります。特に歯ぐきから出血は歯ぐきが腫れていることを示すので、歯周病が活動していることを表します。


その部位の歯ぐきの中に汚れがあれば歯科衛生士が専用の器具で除去し、歯に汚れがついている場合は、患者さんが歯ブラシで除去する方法を覚えます。


患者さんはどこの場所から出血するのかを知っておくことが大切です。検査データの結果を手元に置いておくと良いでしょう。

むし歯については、過去のむし歯経験や毎日の歯ブラシ習慣、食習慣などを確認し、それぞれに対する対策を練っていきます。


ちなみに、歯科医院専用のブラシで歯の表面を磨くクリーニングは病気の進行を防ぐのに効果が無いという研究結果もあります。歯の病気はいろいろな原因から成り立っているので、ただクリーニングを受けるだけではなく、それぞれの原因に対して対策を練ることが重要です。


メインテナンスで歯を守るには、歯科衛生士の知識と技術が求められます。また、原因対策を実行する患者さんの気持ちも大切になります。歯科衛生士、患者さんの両方が協力してはじめて、予防が可能になります。

病気にならないことが最も良い方法

日々、患者の皆様を拝見していると、もっと多くの方にメインテナンスの重要性を知っていただき、病気にならないために歯科医院に通ってほしいと感じます。




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